海外のサイコ・ミステリが読みたい気分で、積読から「百番目の男」(ジャック・カーリイ)を掘り出してきました。
そうとは知らずに本作から続く刑事カーソンシリーズの3、4作目をすでに読んでいるので、絶対にハズレではないだろうという安心感(笑)これがデビュー作にしてシリーズ化って、とんだ大型新人もいたものですね。
デビュー作にして人気シリーズの原点「百番目の男」
「百番目の男(The Hundredth Man)」は、アメリカの小説家ジャック・カーリイ(Jack Kerley)のデビュー作として、2004年に登場したサイコ・サスペンス長編小説。2023年現在、本作を含めて7作品が翻訳されているシリーズものです。
2010年に出た4版の文庫本には、映画化決定の話題作という紹介文が載っているのですが、実現はしていない様子。実写向きの作品で人気が出そうなのに…ざんねん。
秘密を抱える若き刑事カーソンが首なし連続殺人の謎を追う
主人公は、異常犯罪担当部署に所属する若き刑事カーソン。相棒ハリーとともに、体に奇妙な文字が刻まれた首なし連続殺人事件を追いかけます。
首なし死体、謎のメッセージなど事件の異常性はもちろん、カーソンが抱えた暗い秘密が物語をより複雑にしていきます。彼には誰にも触れられたくない過去があり、今だその影響から抜け出せていません。
後半は犯人を追い詰めているのか、追い詰められているのか分からない緊迫感。そのうえ上層部との軋轢や部署存続の危機などもあって、警察小説やバディものとしてもおもしろい。エンターテインメント性とスピード感があって、一気に読ませる作品です。
一般常識のある頭で考えても辿り着けない犯人の意図
どうです、驚いたでしょう?(中略)だってこれはもう、なんというか破格ですもの。
三角和代氏の訳者あとがき冒頭を引用しました。連続斬首事件を起こす犯人ですから、普通とは違った感覚を持っている。というのは明らかですが、それにしても犯人の意図がぶっとんでいる。
一時期、自分のなかに隠された性質を探すサイコパス診断なんてものが流行りましたが、普通の人なら考えない発想というか、思いついてもやろうとは考えない、…そういうのを読みたくて手に取ったんですけどね。
すでに何作品もシリーズ化されているのでいいますが、続編を熱望したくなる終わり方もよかったです。まだまだ始まったばかりじゃないか!