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おぞましさと美しさが共存する海外サスペンスミステリー「蝶のいた庭」読書感想

蝶のいた庭 ドット ハチソン 感想 ブログ
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想像してみてください。滝や池を備えた緑あふれるアトリウム(室内庭園)を。黒いドレスをまとった若く美しい女性たちを。

家族のように想い合っている彼女たちは、美しくて逞しい。アトリウムも夢のように美しい。

すべてを支配する<庭師>の存在を除いては。

美しい地獄で何が?「蝶のいた庭」

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刑事が異常犯罪を追う「百番目の男」で火がついて、もう1冊くらいサイコな物語を読みたいと手に取った「蝶のいた庭」。

百番目の男 感想
サイコ・ミステリな気分に火をつける。首なし連続殺人事件を追う刑事バディもの「百番目の男」読書感想海外のサイコ・ミステリが読みたい気分で、積読から「百番目の男」(ジャック・カーリイ)を掘り出してきました。 そうとは知らずに本作か...

本作は、楽園のように美しい温室<ガーデン>で、<庭師>に監禁されていた女性たちが10名以上も一緒に保護された、というところからはじまります。

そのリーダー役ともいえる女性イナーラに、FBI特別捜査官のヴィクターが事情聴取をします。彼女の口から告げられる事件の全貌に、凄惨な事件に慣れているはずの捜査官たちすら怖じ気づいていく。

残酷で生々しい描写はほぼ皆無といっていいのに、これほど“美しくておぞましい”というフレーズがぴったりの作品もなかなかないんじゃないでしょうか。

小出しに明かされる新事実で驚きの連続

本物の蝶なら、手の届かないところに飛び去れるのに。
<庭師>の<蝶>は落ちるしかできなくて、それすらもめったにできなかった。

現在進行形ではなく、事件が発覚して女性たちが保護されたあとの物語というのに、驚きの連続で引き込まれます。

というのも、基本は事情聴取するヴィクターとイナーラのやりとりで成り立っていて、会話のなかでぽろっと読者にとっての新情報が明かされていくからです。

読んでいる身としては、事情聴取をマジックミラー越しに眺めている感覚に近いでしょうか。

あや
あや
小出しにされる情報がなかなかショッキングで、それからどうやって現在に至るのか気になってしょうがない!

続編も発表されているけど翻訳版は未定

蝶のいた庭 ドット ハチソン 感想 ブログ

私たちの仕事は完璧か? いいや。私たちは完璧な仕事をしているか? いいや。そんなのは不可能だ。それでも、私たちは仕事をし、一日の終わりには悪よりも遥かにたくさんの善を行っている。

さっそく著者であるドット・ハチソンの別作品を読んでみたいと調べてみたところ、残念ながら翻訳されているのは「蝶のいた庭」1冊のみ。

FBI特別捜査官ヴィクターとその相棒エディソンが活躍するシリーズ続編として、2017年にThe Roses of May、2018年にThe Summer Childrenが発表されていますが、日本での出版はどこを探しても今のところ情報がありません(/_;)

「蝶のいた庭」は、事件内容も犯人像もとにかく気持ちの悪いの一言に尽きるのですが、楽園のような<ガーデン>と、囚われてなお凛として逞しいイナーラの姿に、どうしても美しいという感想を持ってしまいます。

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