『江戸川乱歩と名作ミステリーの世界』第22号は、「瓶詰地獄」をはじめとした夢野久作作品集。
まだどちらもかじる程度にしか読んでいないので確信を持つほどではありませんが、ぞっとするような描写に関しては江戸川乱歩よりも夢野久作のほうが上なのかしらん、という印象を持ちました。
幻想と狂気の夢野久作ワールドに誘う短編6作品のあらすじ
表題の「瓶詰地獄」のほか、全6編が収録されています。
瓶詰地獄
無人島に漂着した幼い兄妹が、瓶に詰めて海に放った手紙に書かれていた“恐るべき告白”とは。
あやかしの鼓
持ち主が悲惨な末路を辿る「あやかしの鼓」がある。制作者の末裔である主人公の青年は、いつしかその音を聴いてみたいと欲望しーー。
いなか、の、じけん
大小、人の生き死に問わず、北九州の某地方で見聞きした事件を羅列したもの。
人の顔
口数が少ない奇妙な少女、チエ子。チエ子を養子として迎えた夫婦は、彼女のことを大変可愛がる。
チエ子には何もないところをジィッと見つめる癖があり、ついに彼女が見ているものを告白したとき、夫婦は恐怖に突き落とされる。
涙のアリバイ
探偵と悪人、美人の“手”のみで構成された戯曲風ショートストーリー。
死後の恋
どうか自分の話を聞いて欲しいという不思議な紳士。信じてくれるならすべての財産を捧げるとまでいう。
紳士が語り出したのは、残酷で狂気染みた恋物語だった。
紛れもなく幻想と狂気の作家が産み出した作品群
表題の「瓶詰地獄」は名前だけは知っていて(超有名ですよね!)、実際に読んでみるとかなり短いお話で正直「え、これで終わり……?」と最初は戸惑ってしまいました。
短くて誤読のしようもないと思いながらも、拍子抜けしてしまった自分に驚いてネットで解説や感想を拾い読みして、第一印象から少しだけ物語の捉え方が変わりました。書簡形式の文体というのがミソなんですね。
書き手の主観が全面に出る文章なので「果たして本当にそうなのか?」と疑う視線を持つと不穏な想像が一気に広がります。
そしてダントツで狂気の世界に引きずり込まれたのが「死後の恋」。最後に収録されていたせいもあって、読み終わってからもゾッとする感覚が抜けなくてとんでもないものを読んでしまった気分
全体的に人間の業とか欲望とか残虐性とか、ぞわぞわとするお話ばかりでした。あと、夢野久作の発作的な笑いについての描写「アハアハアハ……」みたいなのが字面に出てくるとうすら寒い気分になるのを止められません、思い出しただけで怖い……