「人間って、こんなにも怖いのか」貴志祐介(きしゆうすけ)の作品を読むたびに、そんなことを思わされます。
人間の狂気や恐怖をリアルに描く作家として知られていますが、単純なホラーにとどまらず、サスペンスやミステリー、SFなどさまざまなジャンルを融合させた物語づくりも魅力のひとつ。
保険会社員が出会った「人間そのもの」の恐怖『黒い家』
第4回日本ホラー小説大賞受賞作。ホラーでありながらサスペンスとしても完成度が高く、「人間が一番怖い」と実感させられる貴志祐介の代表作です。
生命保険会社に勤める若槻慎二は、保険契約者の家を訪れた際、子どもの首吊り死体を発見します。
事故なのか、それとも事件なのか。不審な点を感じた若槻は独自に調査を始めますが、その先で待っていたのは、常識では理解できないほど歪んだ人間の狂気でした。
社会派サスペンスだと思っていたら、想像以上に猟奇的展開
保険金にまつわる不審死を追う社会派サスペンスかと思いきや、待っていたのは猟奇的でサイコパスな恐怖。読み進めるほど追い詰められていく緊張感がすさまじく、「人間が一番怖い」という言葉を心底実感しました。
心理ホラーからSF・パニックホラーへと変貌する傑作『天使の囀り』
終末期医療に携わる精神科医・北島早苗は、アマゾン調査隊から帰国した恋人の異変に戸惑います。極度の死恐怖症だったはずの彼は、まるで別人のように「死」を受け入れるようになり、やがて不可解な自殺を遂げてしまいます。さらに、調査隊のメンバーたちも次々と異常な最期を迎え、「天使の囀りが聞こえる」という謎の言葉だけが残されます。
新興宗教や自己啓発セミナーを思わせる不気味な集団や、人が少しずつ壊れていく様子が描かれる心理ホラー。物語が進むにつれて、恐怖は思いもよらない方向へ広がり、SFやパニックホラーの要素が加わって一気にスケールを増していきます。
「こういう小説が読みたかった!」と思えた一冊
私が初めて読んだ貴志祐介作品で、「こういう小説が読みたかった!」と興奮した一冊です。主人公・早苗とは別に、自己啓発セミナーへ参加する青年の視点でも物語が進み、「人生が好転していく話なのかな」と思わせておいて、そこから待ち受ける展開は想像を絶するものでした。
ディーン・クーンツやスティーヴン・キングなど、海外の長編スリラーを読んだときのようなスケール感と緊張感が味わえる作品です。
呪物ミステリーが織りなす、壮大な伝奇ホラー『さかさ星』
戦国時代から続く因縁と現代の惨劇が交差する、呪物ミステリー×伝奇ホラーの大作です。
戦国時代から続く名家・福森家で、一家惨殺という凄惨な事件が発生します。現場には、人間業とは思えない異様な遺体と、儀式を行ったかのような痕跡が残されていました。
福森家と縁のある中村亮太は、霊能者・賀茂禮子とともに事件の調査を開始。屋敷に保管されていた数々の呪物が超常現象を引き起こし、生き残った子どもたちにも呪いの魔の手が迫ります。
大長編なのに、一度も退屈しない展開
登場する呪物はどれも背景や怨念が濃密で、「この呪物だけで一本小説が書けるのでは」と思ってしまうほど。それぞれの逸話を読むだけでも十分面白いのですが、それらがすべて事件の謎につながっていく構成が見事です。
呪いをテーマにした王道ホラーでありながら、「事件を起こした呪物はどれなのか」「誰が、何のために呪いを仕掛けたのか」というミステリーとしての面白さも味わえる一冊。
ホラー好きにもミステリー好きにも自信を持っておすすめしたい作品です。
「貴志祐介にハズれなし」と思わせてくれる長編ホラー3冊
私自身、著作をすべて読んだわけではありませんが、今まで読んだ作品はどれも面白く、「やっぱり貴志祐介にハズれなし」と思わされるばかり。
ホラーが好きな方はもちろん、「怖いだけじゃない、読み応えのある小説を探している」という方にもおすすめなので、ぜひ手に取ってみてください。

