オーディブルで出会った『ゆるまる脳 タイパ疲れの時代に効く「脳の新習慣」』(菅原道仁)。
脳神経外科医である著者が、脳科学の視点から「脳に余白をつくる新習慣」を提案した一冊です。
だらだらスマホを眺めてしまう理由や、そのとき脳で何が起きているのか、今日から実践できる改善法まで、思わずハッとする内容がたくさんありました。
倍速で消耗する人生になっていないか?
時短や効率化が重視されるタイパの時代。なかでもAIの進化は目覚ましく、以前なら何時間もかかっていた作業が、信じられないほどのスピードで処理されるようになりました。
けれど、そのぶん私たちの生活は本当にラクになったのでしょうか……?
効率化によって生まれた時間をさらに予定で埋め、ふと生まれた余白までスマホで消費してしまう。気づけばいつも何かに追われ、脳を休ませる時間がほとんどない。よりタイパを求めながら、倍速で消耗するような生き方になっていることにすら、気づいていない人も多いのかもしれません。
本書で取り上げられていたアメリカの調査によると、1分間の動画が伝える情報量は約180万語、本にすると約3,600ページ分にも相当するそうです。そうとは知らずショート動画を次々とスクロールし続ければ、脳が疲弊してしまうのも当然ですよね。
しかも本書では、情報を詰め込めば詰め込むほど脳の反応は鈍くなり、本来のパフォーマンスを発揮しにくくなると説明されています。タイパを求めた結果、かえって集中力や判断力が落ち、遠回りになってしまう。その皮肉な指摘がとても印象に残りました。
「自分を紡ぐアーティスト」の声に耳を傾ける
情報を詰め込み続けることで失われるのは、集中力や判断力だけではありません。本書では、「自分らしさ」に関わる脳の働きまで弱くなってしまうと説明されています。
私が特に心を動かされたのは、脳の働きを4人のキャラクターに擬人化して紹介しているところです。
なかでも、自己理解や創造性を担うDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)は、「自分を紡ぐアーティスト」として描かれています。
スマホやSNSなど、外側からの刺激に注意を向け続けていると、このアーティストが語りかける「本当は何が好きなのだろう」「自分はどう生きたいのだろう」という小さな声が聞こえにくくなってしまいます。
その結果、SNSで見かけた誰かの成功や幸せを、いつの間にか自分が望んでいる人生だと思い込んでしまう。誰かの人生をなぞることに夢中になり、自分自身の物語を置き去りにしてしまうのです。
誰かが幸せそうに見える生き方と、自分が本当に心地よいと感じる生き方は、必ずしも同じではありません。自分の望みを知るためには、外から情報を取り入れ続けるだけでなく、立ち止まって内側の声に耳を傾ける時間が必要なのだと気づかされました。
本書の後半では、その「内なるアーティスト」の声を取り戻すための、簡単なワークが紹介されています。
「ぼんやりする時間」は、決して無駄ではありません。脳の中では、その空白にこそ、アーティストが大切な自分の物語を紡いでくれています。
また印象的だったのは、「スマホを見えない場所に置きましょう」「スマホ断ちをしましょう」といった対処療法的な解決策にとどまっていないこと。
スマホに依存するのではなく、便利な道具として主体的に使いこなしていく。そのための考え方や習慣が提案されています。
「忙しくて時間がない」と感じる人ほど読んでほしい一冊

毎日時間に追われ、気づけばスマホばかり見ている。本当は何をしたいのか、自分がどう生きたいのかも分からなくなってきた。
『ゆるまる脳』は、そんな人ほど一度立ち止まって耳を傾けてほしい一冊です。
オーディブル版は、プロのナレーターによる朗読がとても聴き取りやすく、通常速度でも約3時間半ほどのボリューム。私は1.2倍速で約3時間かけて聴きました。
お昼休みに15分ほど目を閉じ、パワーナップへ入る前に聴いたり、夕飯の支度で野菜を大量に切っている時間や、洗濯物をたたんでいる時間に少しずつ聴き進めたり。難しい内容も分かりやすく語られているので、家事をしながらでも集中して聴くことができました。
オーディブル版にはPDF資料も付属していて、脳を擬人化したキャラクターたちのイラストも掲載されています。最初に目を通しておくと、それぞれの役割をイメージしやすくなり、内容も頭に入りやすくなると思います。
だらだらスマホをやめたい人はもちろん、「自分って本当はどうやって生きたいんだっけ?」と立ち止まって考えてみたい人にもおすすめしたい一冊です。
スマホを見る15分を、耳で読書する15分に変えてみませんか?
※無料体験の対象や期間はアカウントによって異なる場合があります。対象の場合は、無料期間中に解約すれば料金はかかりません。


