旅人が行き交い、それぞれが事情を抱えて滞在するホテルは、ミステリーの舞台としても魅力たっぷり。現実から少しだけ離れたような非日常感があり、一冊読み終える頃には、そのホテルに実際に泊まってみたくなることもあります。
今回は、読書&ホテルステイ好きの私が印象に残った、ホテルが舞台(あるいはホテルが物語の鍵を握る)の長編ミステリーを3冊ご紹介します。
山頂のクラシックホテルで現実と幻想が溶け合う『夏の名残りの薔薇』恩田陸
沢渡三姉妹が山奥のクラシックホテルで毎年秋に開く、豪華なパーティ。集まるのは、美貌の桜子や女優の瑞穂など、それぞれに秘密や噂を抱えた人々です。
不穏な空気が漂うなか、関係者の変死事件が発生。これは現実なのか、それとも幻なのか――。
ミステリーなのに、ミステリーを拒む物語
雪に閉ざされた山頂のクラシックホテル、美しい男女が集う豪華なパーティ、どこか背徳的な人間関係。ミステリー好きなら心をくすぐられる要素が、これでもかと詰め込まれています。
ところが読み進めるほど、「これは本当にミステリーなのだろうか」と戸惑わされるはず。タイトルにもなったクラシック曲「夏の名残りの薔薇」のように、同じ出来事が少しずつ姿を変えて繰り返され、現実と幻想の境界が曖昧になっていきます。
『ドグラ・マグラ』への言及や、クリスティ作品を思わせる人物など、ミステリーへの深い愛情も随所に感じられる一冊。ジャンルで説明するより、「恩田陸」という世界そのものを味わう作品です。
一生に一度しか泊まれないホテル『ホテル・ピーベリー』近藤史恵
仕事を辞めた木崎淳平は、友人に勧められてハワイ島にある日本人経営のホテル「ピーベリー」を訪れます。
このホテルには、「宿泊できるのは人生で一度だけ」という不思議なルールがありました。穏やかな時間を過ごしていた矢先、宿泊客がプールで溺死し、その直後にはバイク事故でさらに犠牲者が……。美しいリゾートを舞台に、不穏な空気が静かに広がっていく長編ミステリーです。
ハワイの光と影を味わえる大人のミステリー
ハワイ島の自然や空気が美しく描かれていて、旅行小説として読むだけでも十分に楽しめる一方、どこか日常から切り離されたような静かな違和感が少しずつ積み重なっていきます。その穏やかさと不穏さのバランスが絶妙で、気づけば物語に引き込まれていました。
『ホテル・ピーベリー』は、オーディブル版もおすすめ。
プロのナレーターによる朗読で、ハワイ島の空気感や静かな緊張感がより鮮やかに伝わってきます。
※無料体験の対象や期間はアカウントによって異なる場合があります。対象の場合は、無料期間中に解約すれば料金はかかりません。
閉鎖されたホテルに隠された謎『人を呑むホテル』夏樹静子
「クローズの晩に泊まると誰かが行方不明になる」。そんな奇妙な噂がささやかれるホテル精進湖。
ある日、その日に宿泊した赤司行彦の恩師夫妻が失踪し、行彦は婚約者の畑野テオリとともに閉鎖中のホテルへ潜入します。しかし手がかりは見つからず、その後、恩師の遺体だけが山中で発見されることに――。死体移動の謎と複雑な人間ドラマが絡み合う、読み応えたっぷりのサスペンスです。
ホテル好きならタイトルだけでも惹かれる一冊
『人を呑むホテル』というタイトルからして、思わず手に取りたくなります。
物語の中心はホテルそのものというより、そのホテルを巡る事件ですが、「閉鎖中のホテルへ潜入する」という展開がたまらなく魅力的。営業していないホテルならではの静けさや異様な空気が、作品全体を包んでいます。
1994年刊行の少し懐かしい作品ですが、古き良き長編ミステリーの面白さを存分に味わえる一冊です。
『人を呑むホテル』をはじめ、夏樹静子作品はKindle Unlimitedの対象になっていることがあります。
ほかにも読み応えのある長編ミステリーが対象になることが多いので、この機会にまとめて読んでみるのもおすすめです。
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※Kindle Unlimited対象作品は時期によって変更される場合があります。
※無料期間中に解約すれば料金は発生しません。
ホテルはミステリーがもっとも映える舞台のひとつ

ホテルという場所には、不思議な魅力があります。
旅先という非日常、一期一会の宿泊客、それぞれが抱える秘密。そして、扉を一枚隔てた先に何があるのかわからない静かな緊張感。
そんな空間だからこそ、ミステリーはより魅力的に感じられるのかもしれません。
幻想と現実の境界が揺らぐクラシックホテル、一生に一度しか泊まれないハワイのホテル、奇怪な噂が残る閉鎖中のホテル。
- 『夏の名残りの薔薇』
──幻想と現実の境界が揺らぐクラシックホテル - 『ホテル・ピーベリー』
──一生に一度しか泊まれないハワイのホテル - 『人を呑むホテル』
──奇怪な噂が残る閉鎖中のホテル
どの作品もホテルという舞台が物語の空気をつくり上げる、ホテル好き・ミステリー好きの方にぜひ読んでほしい長編小説です。
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