“湊かなえが描くブロマンス”として、発売前から話題を集めた長編小説『王国』。男性同士のアツい物語好きとしては、絶対に見逃せません。
公式では「究極のブロマンス・ミステリ」として刊行され、湊かなえ本人も「推し活をするように好きな人を当てはめて、彼らを応援したいと思ってもらえるように」と語っている作品です。
「なぜ珊瑚の女王は死んだ?」海とイケメンたちのブロマンス・ミステリー
『王国』は、故郷の海を愛する青年と、彼の夢に集まった8人の青年たちが織り成す青春群像劇です。彼らの夢と深く関わる女性の死を巡り、それぞれが一人で抱え込んでいた秘密と向き合っていきます。
“海の王国”を作るという夢のために集まった彼らは、“海の騎士”としてそれぞれにメンバーカラーがあったり、特に仲のいいコンビがあったりと、推し活のようにお気に入りの登場人物たちを応援したくなる物語です。
また、物語の中心に謎はあるものの、ミステリーというよりは青春群像劇として清々しく読めます。
『王国』はブロマンス小説なのか?
発売前から“湊かなえのブロマンス・ミステリー”という言葉が独り歩きして、期待値を上げすぎてしまったのか、SNSでは「思っていたブロマンス(・ミステリー)ではなかった」という声もちらほら見かけました。
確かに1対1の男性同士の強い結びつきが描かれているわけではないので、ブロマンスの捉え方によっては物足りなさを感じる人もいるかもしれません。
ただ、個人的にはかなり好きな作品で、海の騎士たちの関係性が、過去のしがらみから、未来へのつながりに変わっていく光の物語として、これから何度も読み返すんだろうなと感じています。
推し、コンビ、そして箱推ししたくなる青春群像劇
『王国』の面白さは、やっぱり推し活感覚で楽しめるところ。推し色が決まっているのも楽しいですし、9人全員が同じ強度で結びついているわけではなくて、特に仲の良い友人同士がいたり、大学の教授と院生という組み合わせがあったり、キャラクターや関係性から自分のお気に入り(推し)を見つけられます。
個人的には、普段は柔和だけど怒らせるとすごく怖い「凪真」という青年が推しで、生真面目な親友・杉浦航生との関係性がとにかく大好き!
本筋には関係ないけれど、凪と杉浦がお互いに贈り合ったプレゼントを大切に使っていたり、彼女と勘違いされたり、といったエピソードが地の文でさらっと書かれていると嬉しくなります(笑)
9人全員が主人公、と言っていいくらい同じ熱量で物語が紡がれていくので、「推しの出番が少ないな……」と物足りなさを感じることもなく、最終的には海の騎士たち全員の箱(=グループ)推しになっていてもおかしくはない。そんな青春群像劇でした。
イヤミスじゃない湊かなえ作品は、「光の物語」だった

1人の人間が、特定の誰かに向ける重たい感情、というブロマンス・ストーリーも大好物ですが、光のある青年たちの友情物語というのも、同じくらい好みだと気づいた1冊でした。
さすがイヤミスの女王として君臨する湊かなえの筆力で描かれるだけあって、軽やかなのに薄くはない、光の差し込む海のようにキラキラと透き通った作品でした。
きれいだからこそ、決して消えない過去もよく見通せる。そして同じものを一緒に見つめる彼らは、もうきっと迷わず進んでいける。まさかイヤミス女王の作品で、こんなに心が軽やかになる日が来るとは思いませんでした(最高です)。
湊かなえ『王国』みたいなブロマンス小説が読みたいなら
男性たちの特別な友情物語が読みたいなら、恩田陸の『ネバーランド』がものすごくおすすめです!
伝統ある男子校の寮「松籟館」を舞台に、冬休みの間に寮に残った4人の少年たちの一週間を描いた青春ミステリー。告白ゲームをきっかけに、それぞれの過去や秘密を語り始め、青春時代の不安や葛藤、友情が描かれます。
また、「ブロマンスではなくて、もう相手のことを愛していてくれ!」という人におすすめの一般小説は、下の記事にまとめています。物語の深みを味わいながらBL的な要素を楽しみたいという方は、ぜひチェックしてみてください。


