江戸川乱歩と名作ミステリーの世界で、「黒蜥蜴」から「怪人二十面相」と立て続けに乱歩作品を読んだんですが、
にくいです。この並びがとてもにくい!
どちらも名探偵・明智小五郎が活躍する物語で、黒蜥蜴は大衆向け、怪人二十面相は少年向けという違いがあります。
この大人か、子ども向けかのコントラストがくっきりとしていて、世界観は同じなのに物語の見せ方がまるで違いました。
名探偵&少年探偵VS大怪盗ーー江戸川乱歩「怪人二十面相」
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「怪人二十面相」は、少年向け推理小説として書かれたシリーズ1作目。老人、女性、浮浪者など20の顔を持つといわれる変装の名人にして大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎が対峙します。
そして「黒蜥蜴」とテイストを大きく変える存在が、愛らしい小林少年であり、本作のもうひとりの主人公です。小林少年は11~13歳の男の子でありながら、明智小五郎の立派な助手を務めます。
名探偵の不在中、自ら事件の依頼を引き受けたり、拳銃が扱えたりともう立派な少年探偵ぶり。物語の最初は怪人二十面相VS小林少年と言えるほどの活躍です。
しかし小林少年や警察をまんまと出し抜いた怪人二十面相は、とんでもない犯行予告を世間に公表します。名探偵・明智小五郎はその予告を阻止するべく動きだしますがーー。
「黒蜥蜴」では明智と女盗賊のライバル関係にハラハラさせられましたが、本作は明智と小林の信頼関係になんだか温かくなりました。
あの頃(子ども時代)に読んでいたなら……
突然ですが、わたしはアラサーです。
アラサーまで生きていますが、日常のなかで「年をとったな」と思うことはあっても、「大人になったな」と思う機会ってそうそうありません。
本作を読んでいて、悲しいことに人(登場人物)を疑うことが身につきすぎて、お話の展開を読めてしまう自分が大人だなと思いました。
きっと子ども時代だったら「これからどうなるんだー」「まさか、そうだったのか!」となるところが、「やっぱりね」という感想に落ち着く。
正直ちょっと、もったいないことをしたなと思います。
ただこの作品が物足りなかったのかと言えばそうではなく、乱歩の語り口は妙にワクワクさせられました。きっとここで子どもたちは目をキラキラさせるんだろうなとも想像できて、ちょっとだけ自分の童心も蘇ったみたい。
文章や物語で、子どもたちを楽しませられる乱歩(大人)って素敵ですねえ。