探偵がいて、助手(相棒)がいて、警察の手に負えない事件が起こって、
という推理小説でお決まりの型が、「世界初の1冊」にして完成されていたって、すごくないですか。そして現在まで愛され続けているって、奇跡のようじゃないですか。
江戸川乱歩と名作ミステリーの世界11号にて、久しぶりにポーの「モルグ街の殺人事件」を読みました。素人探偵C・オーギュスト・デュパンが不可解事件を解き明かす世界初の推理小説です。
名探偵C・オーギュスト・デュパンが活躍する3部作
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江戸川乱歩と名作ミステリーの世界11号は、素人探偵C・オーギュスト・デュパンが活躍するエドガー・アラン・ポーの3作品が収録されています。
モルグ街の殺人事件
言わずと知れた世界初の推理小説。二人暮らしをしていた母娘が惨殺される事件が起こります。
首を絞め殺された娘は逆立ち状態で煙突に詰め込まれ、中庭で発見された母親は首を切られて頭がとれかかった状態に。現場となった母娘の部屋は鍵がかかっており、金品もそのまま残されていました。
さらに事件の謎を深めるのが、第一発見者たちの証言。犯人らしき人物の声を全員が耳にしているものの、内容が食い違っているのです……。
マリー・ロジェエの怪事件
「モルグ街の殺人事件」を見事に解明した素人探偵デュパンが活躍する2作目。「世界初の安楽椅子探偵もの」といっていいでしょう。
美貌の娘が失踪後、死体となって河に浮かんでいるのを発見されました。犯人が分からないまま、新聞各紙の報道合戦は加熱。捜査に行き詰まった警視総監はデュパンに事件解明を依頼します。
盗まれた手紙
デュパンシリーズ3作目。モルグ街の殺人から数年が経っています。
今回は、さる高貴な貴婦人の手紙が、政治的な目的で盗まれてしまいました。
犯人は分かっているものの、公にはできない上に肝心の手紙の在処が分からない。またまた頭を抱えてしまった警視総監は、デュパンに相談してみることに……。
探偵と助手の名コンビものがもっと読みたい!

クリスティも好きだけど、やっぱり名探偵と助手のコンビが活躍する推理小説が大好きです。というか、コンビものに弱いです(笑)
ポーの素人探偵デュパンが、そのままシャーロック・ホームズの原型になっているだけあって、奇人っぷりもさることながら傍らにいる相棒(助手)の存在は無視できません。
「手短に話しましょう。だがその前にご注意願いたいのは、これは絶対秘密を要する事件で、もし僕が他人に洩らしたことが知れたら、僕はおそらくいまの地位を失わねばならん、ということです」
「まあ、お始めなさい」と私が言った。
「なんなら、およしになっても」とデュパンが言った。
(『盗まれた手紙』より引用)
デュパンの才能に惚れ込み、生活をともにする語り手で名もなき「私」。デュパンの頭脳だけあれば事件は解決できるだろうけれど、「私」の存在があるからこそデュパンの魅力が伝わってくるし、浮世離れしないのだと思います。
「マリー・ロジェエの怪事件」なんかは小難しい文章でストーリーがすんなり入ってくるわけじゃなかったんですが、手分けして調査をはじめるデュパンと私のコンビにワクワクしました。デュパンシリーズがこの3作品だけ……というのが改めて惜しい。
ホームズにワトソンしかり、火村にアリスしかり、探偵と助手のコンビミステリーにどっぷり浸かりたくなりました。

