隔週コレクション「江戸川乱歩と名作ミステリーの世界」いよいよ積み出しているんですが、やっぱり読み出してみると面白い、止まらない作品が多いです。
今回初めて読んだ怪盗紳士アルセーヌ・ルパンシリーズは、なるほど情に厚く天才的なルパンの魅力にどっぷりハマっちゃいました。なるほどなるほど……
モーリス・ルブラン「奇巌城」「水晶の栓」あらすじ
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表題の「奇巌城」のほか、もう1作品(「水晶の栓」)収録されています。
「奇巌城」菊池寛訳
もう泣くな君、こんな闘争の中に飛び込んでくれば、このくらいのことは覚悟していなければならない。前にもいうた通り我々は敵同士ではないのだ。俺は初めから君が好きであった。だから俺は君を苦めたくないけれども、君が俺に敵対する以上はやはり仕方がない。
高校生探偵の美少年イジドール・ボートルレと伝説的怪盗アルセーヌ・ルパンとの対決を描いた一編。伯爵邸で起きた殺人と絵画の盗難事件をきっかけに、ボートルレがルパンの計画を阻止しようと動きだしーー
ルパンも認める行動力と推理力をもつボートルレ君。父親のことを思ってはらはらと泣いたり、少女のような薔薇色の頬をもっていたりと、愛らしく描かれています。
「水晶の栓」新青年編輯局訳
いわんや俠気自ら許すルパンである。彼の眼底に同情の涙が湧くと同時に、その眼光に、正義の光が物凄く輝き出した。
悪徳代議士の別荘に押し入ったルパン。しかし計画が狂い部下のジルベールが逮捕されてしまう。部下を救出しようとするルパンだが、謎のお宝“水晶の栓”と、なかなかに手強く正体不明の敵に翻弄されーー
怪盗“紳士”たるルパンの人柄がよく分かる作品でした。
アルセーヌ・ルパンがとにかく格好良い!!
ひとまず、どちらの作品もものすごく面白かったです。好きです。
「奇巌城」は、ルパンに出し抜かれたときのボートルレ君のいじましさったら。
「ああ笑った!笑った。」とルパンは大喜びしながら叫んだ。「君のその笑い顔は実に可愛いよ。君はもっと笑わなくちゃあいかん。」
思わずルパンも敵対したくないなって困り顔になってしまう感じが、ほんのり耽美でブロマンス的。関係性が、明智探偵と小林少年に重なる部分もありました。
「水晶の栓」は、部下を切り捨てるのではなくて、救出しようと動き出すあたりに、ルパンの仁義を感じます。展開が読めず、引き込まれるストーリーラインはもちろん、粋なラストに痺れました。
ちなみに訳者の違いによって、ルパンの雰囲気が少し変わっているのが印象的です。敵対している相手への態度の違い、とも言えますが、「奇巌城」がより紳士的で、「水晶の栓」はどちらかというとプライドが高い俺様な感じ。
……まあどちらのルパンも素敵には変わらないのですが、面白い発見でした。