『神様が殺してくれる』は、本格ミステリ作家として知られる森博嗣が描く、少し異色の物語です。
舞台の中心は、フランス。ゾッとするほど美しい青年リオンと、かつて半年ほどルームメイトだったインターポール勤務の“僕”ことレナルド。
レナルドはリオンとの再会によって、不可解な連続殺人事件に巻き込まれていきます。
単なるルームメイトに過ぎなかったはずなのにーー2人を再会させたのは殺人事件
インターポールで働く“僕”ことレナルドは、ある日刑事から「殺人現場にいた人物から、あなたの名前が出た」と連絡を受けます。
殺人現場にいたのは、ゾッとするほどの美貌を持つ青年リオン。体を拘束されており、物理的に犯行は不可能な状態でした。
そんなリオンの証言によると、犯人は「神様」で、その神様は「レナルド」だというのです。身に覚えのないレナルドは驚愕します。
そもそも2人は、大学生時代に半年だけルームメイトだった時期があり、特別親しい関係ではありませんでした。むしろレナルドはリオンから嫌われていたとも感じていて、卒業後は完全に没交渉。にもかかわらず、なぜ今更?
不可解な証言に戸惑いながらも、レナルドはインターポール職員として事件を追うことになります。
「ゾッとする……」美青年リオンの異質なまでの美しさ
物語の中心にいるのは、ゾッとするほど美しい青年リオン。レナルド視点の物語なので、それほど登場シーンは多くないのですが、その分現れたときの印象は鮮烈。
ぞっとしたという表現は、よくわかった。僕も同じだったからだ。多くの人が、彼を見たとき抱く印象だろう。綺麗で、この世のものとは思えない。そして、怖い。
作中では「女性にしては美しすぎる」という洒落た表現の仕方もしていて、異質なまでに人間離れしたリオンの美は、性別を超え、良くも悪くも周囲の人生を揺さぶります。
再会を果たしたレナルドも、さらに美しさに磨きがかかったリオンに翻弄されていきます。
さすが森博嗣!一気に謎が解きほぐされる鮮やかなクライマックス

そしてさすが本格ミステリ作家・森博嗣というべき、クライマックスの鮮やかさ。
謎が一気に解きほぐされる終盤の展開は、正直ブロマンスに目がくらみすぎていたのもあってかなり驚きました!「思えば、そういうことだったのか」という伏線がみるみる回収されていきます。
性別を問わず人々を狂わせてしまうほどの美貌の青年リオン。そんな彼から「神様」と呼ばれたレナルド。2人の物語は、ブロマンス好きにとってこれ以上ないほど濃密な読書体験になるはずです。

