2023年2月15日(水)に創刊された、「江戸川乱歩と名作ミステリーの世界」。乱歩をはじめ、ポーや夢野久作などミステリー史に残る傑作を、絢爛豪華なハードカバーで揃えられるアシェットの隔週刊コレクションです。
SNSで情報を見かけてから「創刊号は絶対買うぞ!」と楽しみにしていて、就寝前や移動中に少しずつ読んで、購入から1週間で読み終えました。
最初の1冊は手に取りやすいけど、最後まで完走できるか私のお財布…! というのがやっぱり悩み。創刊号は499円で、2と3巻が1,999円、4巻目以降が2,249円(すべて税込)。予定では100号…とあるけれど、もう少し伸びる気もします。
実際に手にしてみたハードカバーの質感やデザインに、コレクション欲がむくむくと刺激されはしたのですが、一旦定期契約は控えて、どこまで続けられるか試してみようと思います(結局買う)。
黒地に妖しく光る文字…絢爛豪華なハードカバー
黒地のハードカバーに、妖しく光る黄金色の文字。大正末期から昭和初期の挿し絵にインスパイアされた、ノスタルジックな装丁は、いざ自宅に迎えてみると存在感が異質…!
ずらっとシリーズが並んでいたらと想像すると、もはや物質として所有して満足してしまいそう(本は読むもの本は読むもの本は読むもの…)。
実際、買って満足するくらいなら止めておこう…という気持ちもありました。が、ミステリーの名作には「有名すぎて名前は知っているけど、読んだことはない」というのも多い。青空文庫や図書館という選択肢もありますが、結局いつでも読めると思うといっこうに読まないんですよね…。
きちんと身銭を切って、名作を読もう! をモットーに、来月も続けたいと思います。
創刊号は江戸川乱歩の短編6作を収録
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創刊号は「屋根裏の散歩者」を表題作にした、江戸川乱歩の短編小説6作品が収録されています。
屋根裏の散歩者
何をやってもこの世が面白くない郷田三郎が、唯一興味を示したのが「犯罪」。引っ越した下宿屋で、屋根裏から他の住民を観察する楽しみのなかで、ある計画をひらめく。
二銭銅貨
乱歩デビュー作。貧しさにあえぐ若者二人。ある日、「私」が机においていた二銭銅貨を手がかりに、友人は強盗が隠した大金の在処を探り当てたという。
赤い部屋
「赤い部屋」は、異常な興奮を求める男たちが集うクラブ。慣例通りに、新人が刺激的な話を披露する。それは完全犯罪で百に近い人物を殺めてきたという告白だった。
蟲
厭人家の柾木愛造は、ひとり土蔵にこもった暮らしをしている。唯一の友人に引き合わされた美しき女優は、柾木が幼きころに恋心をおぼえた同級生だった。柾木の純愛が、狂気に変わっていく。
鏡地獄
鏡に異常な執着を見せる男の末路。彼は超えてはいけない、悪魔の領域に踏み出してしまった。
押し絵と旅する男
「私」は汽車のなかで、老人に1枚の押し絵を見せられる。言われたとおりに双眼鏡越しに絵を見てみると、描かれた男女は生きているようでーー。
私のお気に入りは「赤い部屋」「蟲」「押し絵と旅する男」
いちばん強烈な印象だったのが「蟲」で、タイトルを意味するシーンは思わず顔をしかめてしまいました。P・ハイスミスの「愛しすぎた男」と似た感触というか、ストーカー男の視点で見た世界の切実さって、いかんともしがたい…。
「赤い部屋」は、いろんな人を殺めてきたという男の告白が決して絵空事ではなく、現実にもありそうなやり口で恐ろしい。また、悪趣味な会員たちがビビりまくっているところを想像すると痛快。結末は賛否両論ありそうです。
「押し絵と旅する男」は、きれい。他作品と同様、不気味な内容ではあるんですが、汽車で旅をする老紳士、愛し合う男女の絵など、浮かんでくるシーンが怪奇のなかにも美しさを帯びていて、私の好みでいえばこれがドンピシャリ。そういえば、京極夏彦の「魍魎の匣」にも似たシーンがあって好きだったなあ、と思い出しました。