「恋愛感情にも似た少年たちの友情に胸が熱くなった」という感想をSNSで見かけて、スティーヴン・キングの長編ホラー小説『クリスティーン』を読みました。
ここまでの長編小説を手にするのは久しぶりだったのですが、早く続きを読まないとどうにかなりそう……! というくらい引き込まれて夢中になる作品でした。
いじめられっ子が恋したのは……『クリスティーン』あらすじ
支配的な両親に抑圧されて育ち、学校ではいじめられ、顔はにきびだらけの少年アーニー。みじめを絵に描いたような少年ですが、彼には「ぼく」ことデニスという幼い頃からの親友がいます。
アーニーはデニスという親友がいるからこそこれまで心が潰れてしまうことはなかったし、デニスもまた「自分だけがアーニーの良さを知っている」という満足感を持っていました。実際、親やクラスメイトたちにビクビクせず、ふたりきりでリラックスして過ごすひとときのアーニーはユーモアセンスあふれる少年だったのです。
そんなある日、アーニーは運命の出会いを果たします。
※写真はイメージです。
デニスの目にはオンボロの古い車にしか見えない58年型プリマス・フューリー。その名も「クリスティーン」。デニスが止めるのも聞かず、アーニーは“彼女”を手にいれます。
しかしアーニーがひと目見た瞬間からゾッコンのクリスティーンは、単なる車ではなく怨念をたっぷりと詰め込んだ人殺しマシーンでもあったのです……。
車が人を殺していくホラー小説であり純度高めの友情物語
クリスティーンとの出会いから、別人のように性格が変わっていくアーニー。いつのまにか顔のにきびは減り、美少女に熱視線を向けられるほどイイ感じの少年に変わっていきます。
しかしアーニーの世界はクリスティーンが中心。というか、“彼女”が自分以外に目を向けるのを許しません。
次第にアーニーは孤立していき、“彼女”が起こした事件について刑事からマークされていきます。
下品でキレやすく、“彼女”に魂を囚われたアーニー。
親友がまるで自分の知らない人間になってしまった戸惑いと恐怖を感じながらも、デニスはかつてのアーニーに戻ってほしいと行動を起こします。手に取ったきっかけでもある「恋愛感情にも似た少年たちの友情」という感想のとおり、なるほど、ブロマンスともとれる一途な友情物語でした。