本屋や古本屋をふらっと歩いていると、思いがけず気になる本に出会うことがありますよね。私もそんなふうに出会ったのが、ジョナサン・ケラーマンの『トラウマ』でした。
タイトルに惹かれて手に取ってみると、残酷な連続殺人鬼の陪審員を務めたことで悪夢に悩まされる女性の話だと分かり、異常心理や深層心理好きとしてはそそられる……。
しかも、このシリーズは日本で翻訳されていないだけで、2023年までほぼ毎年新刊が出ている人気作でした。もちろん、『トラウマ』単独でも楽しめます。
【あらすじ】残酷な連続殺人鬼裁判が呼び起こした忌まわしい記憶
物語の主人公は、臨床心理医のアレックス・デラウェア。ある日、彼のもとにやってきたのは、悪夢に悩まされる女性・ルーシーでした。
彼女が悪夢に襲われはじめたきっかけは、凶悪な連続殺人鬼の裁判。その事件に関わったことで、彼女は自分の中に封じ込めていた恐ろしい記憶と向き合うことになります。
アレックスは親友で刑事のマイロとともに、ルーシーの過去を紐解き、事件の真相に迫っていきます。
登場人物が多く、やや混乱しつつも夢中になった
正直いうと、「え、この人誰だっけ?」と何度も登場人物表を見返しました(笑)
登場人物の多さにやや混乱しつつ、けど先の展開が気になってそのまま突き進んでしまう。気づけば、物語の全体図を完全に掴めていないままエンディングを迎えていましたが、不思議とモヤモヤは残りませんでした。
それはきっと、この作品が玉ねぎのように重層的な物語でありながら、「核は実にシンプル」だから。「難しいけれど、納得できる」という読後感です。
心理描写がリアルでゾッとする
直接的なグロテスクな描写は少ないものの、心理的にゾクっとする場面が多かったです。
たとえば、ルーシーが悪夢を見るようになった連続殺人鬼の裁判。彼の所業はもちろん恐ろしいのですが、それ以上に怖かったのは、彼に共感し、自由を訴える信者の女性たち。
そんなリアルさに惹かれたからこそ、登場人物が多くて混乱しながらもページをめくる手が止まらなかったんだろうなと思います。
ちなみに、確信をもって言えることがひとつだけ。
アレックスはハンサム!(これだけは間違いない)
タイトルの通り、人間の心の奥底に触れるゾクッと感のある1冊
『トラウマ』というタイトルの通り、人間の心の奥底にある「トラウマ」と真正面から向き合う作品でした。
昭和~平成初期のミステリーが好きな人なら、きっとこの雰囲気にハマるはず。私はすっかりシリーズが気になってしまい、すでに別の作品も入手済みです。
アメリカでは長年愛され続けているシリーズなので、翻訳されていない作品も含めて、もっと読んでみたくなりました。


